2018年2月9日金曜日

哲学カフェ:テーマ「遊び」レジュメ公開


2018年2月4日(日)に東京、恵比寿で開かれた、哲学カフェ:テーマ「遊び」の主催トーク用レジュメです。



*ハッシュタグ #遊びの哲学 を使いました。
*エピグラフはふつう書物に入れるものですが、遊び心でモンテーニュを引きました。
*「遊び」という言葉の用法を探る文例集です。
*二重山括弧《》で示したのは、文例から読み取れるニュアンスで、これを「タグ」と呼んで、活用しました。

以下、A4で3枚にわたるレジュメのコピーです。

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哲学カフェ:テーマ「遊び」
#遊びの哲学
2018.2.4. 主催:木村洋平

エピグラフ ーーそれにしても、われわれの時代には、知性のある人々のあいだでも、いつのまにか哲学が、空しくて、空想的なものの代名詞のようになってしまい、社会的評価においても、実際においても、役立たずの、無価値なものにまでなってしまったことは、まったくもって驚くべきことというしかありません。わたしには、哲学へと通じるまっすぐな道に立ちはだかる、七面倒くさい屁理屈がその原因だと思えてなりません。(中略)本当は、これほど陽気で、元気いっぱいで、楽しくて、茶目っ気たっぷりのとまでいいたくなるようなものはないのです。哲学が説くのは、どれもこれも愉快な、お祭り気分なのです。
ミシェル・ド・モンテーニュ(1533-1592)

1.否定的な用法
「おそらくは滑稽な詩など存在せず、あるとしても遊びにすぎない。」ーーアラン
《くだらない》《非ー創造》《表面的》

「こうした自然のたわむれも、好事家のなぐさみとしてしか通らないのである。」ーー『地球がこうむってきた大異変の記念物総覧』(1777年)
《くだらない》《偶然》《表面的》

「なすべきことを、なおざりにし、なすべからざることをなす、遊びたわむれ放逸なる者どもには、汚れが増す。」ーーブッダ
《非ー聖なる》《怠ける》《法則性のなさ》

2.肯定的な用法
「そして、この小屋が見てきた、たくさんのゆうぎや、気ままなふるまいや、いたずらや、たのしい宴会などといったらーーとてもとても、書きつくすことはできません。」ーートペリウス
《自由》《楽しい》《子供》《法則性のなさ》

「いいか 愛と自由とあそびの三つを手に入れたものだけが
しんから心おきなくふるまうことができるのだよ。」ーーエンデ
《自由》《安らぎ》《世間の束縛のない》《喜び》

「つまり、エンデはこの物語の世界にすっかり身をまかせて無心に遊んだのでした。」ーー上田真而子
《没入》《人生》《芸術》《創造》《安らぎ》

「そうだ、創造の遊戯のためには、わが兄弟たちよ、聖なる肯定が必要なのだ。」ーーニーチェ
《子供》《創造》《聖なる》《安らぎ》《喜び》

「しかしわたしに何より必要なものは孤独なのだ。つまり、快癒、自分への復帰、自由で、軽やかで、遊びたわむれる空気を呼吸することだ……」ーーニーチェ
《自由》《軽やか》《世間の束縛のない》《安らぎ》《喜び》

「芸術家の生き方の基本姿勢は働くことではなく、遊ぶことなのです。」「結局、芸術を人生ゲームのひとつの側面として捉え、人生そのものをゲームの技法と考える姿勢」ーーキャンベル
《芸術》《世間の束縛のない》《人生》《没入》《それ自体が目的》

「あの果てしなく広がり、自由で気まま、変化してやまない道の世界に遊ぼうと」ーー荘子
《没入》《自由》《世間の束縛のない》《安らぎ》《奥深い》

「今、わたしは幽暗の世界に遊ぶ。」ーー張九齢
《没入》《奥深い》《世間の束縛のない》《安らぎ》

「神通とは自由、遊戯とは自主者の行為です。」「遊戯三昧(ゆげさんまい)ということは自由なものの生活形態です。」ーー鈴木大拙
《自由》《自律》《生活》

「心は浄土に遊ぶなり。」ーー親鸞聖人
《自由》《没入》《聖なる》《安らぎ》

遊戯(ゆげ)とは「仏、菩薩の自由自在でなにものにもとらわれないこと」ーー辞典
《自由》《自律》

3.中立的な用法
「純粋な色の遊戯を観察することは、画家にとって学ぶところが大きいことだけは確かだ。」ーーアラン
《変化》《美》《法則性のなさ》《芸術》

「地上では 生命の戯れが 果てしなくさざめく、
別れと出会いーーなんという笑いと涙か!」ーータゴール
《生命》《法則性のなさ》《偶然》《人生》

遊び戯れる光に包まれる。まわりでは、光がきらめく歯を見せて笑い、眼を細め、明るく透き通った肌を露わにしている。」ーール・クレジオ
《偶然》《生命》《法則性のなさ》《人生》《安らぎ》《喜び》

「ほんとうの会話というのは、単なる言葉の遊戯なのだ。」ーーノヴァーリス
《自律》《そのほかに目的をもたない》《それ自体での完結》《行き交い》《法則性のなさ》

「その実は聖も真も善も美もない。」「そこを突き抜けて、滞らないところに飛び出ると、事々無礙なるところ、遊戯自在で、無限の創造が可能の世界にはいることができるのである。」ーー鈴木大拙
《非ー聖なる》《非ー美》《自由》《創造》《移動》《法則性のなさ》

<結論部>
① 自由自在
② 自律
③ 法則や合理性から離れている。

参考文献一覧
『エセー』モンテーニュ、宮下志朗訳、白水社、2005
『芸術論20講』アラン、長谷川宏訳、光文社古典新訳文庫、2015
『奇妙で美しい石の世界』山田英春、ちくま新書、2017
『ブッダ伝:生涯と思想』中村元、角川ソフィア文庫、2015
『星のひとみ』トペリウス、万沢まき訳 岩波少年文庫 1987
『ミヒャエル・エンデ』安達忠夫、講談社現代新書、1988
『ジム・ボタンの機関車大旅行』エンデ、上田真而子訳、岩波少年文庫 2011
『ツァラトゥストラはこう言った』ニーチェ、岩波文庫、1967
『この人を見よ』ニーチェ、岩波文庫、1969
『生きるよすがとしての神話』ジョーゼフ・キャンベル、角川ソフィア文庫、2016
『荘子 全現代語訳』池田知久訳・解説、講談社学術文庫、2017
『中国名詩選(中)』川合康三編訳、岩波文庫、2015
『無心ということ』鈴木大拙、角川ソフィア文庫、2007
『あそぶ神仏:江戸の宗教美術とアニミズム』辻惟雄、ちくま学芸文庫、2015
『原典で読むタゴール』森本達雄、岩波書店、2015
『地上の見知らぬ少年』ル・クレジオ、河出書房新社、2010
『試行錯誤に漂う』保坂和志、みすず書房、2016