2019年5月22日水曜日

グラナダの密度と重力

『孤高のリアリズム』

画家、戸嶋靖昌(としま・やすまさ 1934-2006)の画集を観る。
40歳の頃スペインに渡り、小村に一年、その後、グラナダに拠点を移す。25年以上を向こうで過ごした。

バロック絵画に惹かれた戸嶋の絵には、たとえばレンブラントの趣がある。けれど、一番強く「残響」を感じるのはセザンヌ。ときに、ルオーを思わせる絵も。

その絵にはどれも凄みと落ち着きがある。長い時間を閉じ込めた絵だ。その土地に暮らした、というひとだけが描ける土地の空気、風土。グラナダの密度と重力。

とりわけメンブリージョ(西洋花梨)を好んで題材としたが、そこには音楽性がある。花梨の腐る過程までをも描き、「見捨てられたものの中に、美しいものがある」という言葉を残したそうだ。

参考:戸嶋靖昌記念館ホームページ