2020年3月8日日曜日

【仕事】リモートワークのやり方──「ワードプレス・ドットコム」の世界

この記事は『マイクロソフトを辞めて、オフィスのない会社で働いてみた』(スコット・バークン著, 依田卓巳訳, 新潮社, 2015)の紹介です。


リモートワークについて、また、企業文化のユニークな「ワードプレス・ドットコム」(オートマティック社)について知るのが楽しい本だった。



著者は、マイクロソフトのマネージャーだったが、世界的なブログサービス(さらにホームページのサービスでもある)ワードプレス・ドットコムに転職する。

そこはリモートワークで成り立つ世界だった。世界中の優秀な社員が、家や地域のカフェで働き、オンラインで会社に貢献している。

みなが毎日、新しい機能(ワードプレス上の機能)を開発し、提供する。利用者からのフィードバックを受ける。彼らは情熱と個性の持ち主でもあった。

***

独自の企業文化がこうした働き方を可能にしている、と著者は考える。

1.透明性:報酬など、ごく一部の情報を除き、すべてがオンラインで共有されている。
2.実力主義(メリトクラシー):地道に時間をかけて仕事をしたひとが尊敬を受ける。
3.長命:創業者のマット・マレンウェッグは「オープンソース」でワードプレスのサービスを運営している。だから、仮にマットがいなくなっても、サービスは世界中のプログラマーによって自由に継続されうる。


さて、どのようなツールを使ってコミュニケーションはなされるのか。

1.社内ブログ 75%
2.チャット 14%
3.スカイプ 5%
4.メール  1%

おおよその割合はこのようだ。
社内ブログは、チームの誰でもが投稿でき、投稿に対してコメントもできる。おそらく、1.と2.を合わせていまの Slack のようなものではないか、と本から想像される。

スカイプの割合は低いが、冗談を言ったり、一対一で信頼関係を作るには必要だ、と著者は言う。また、ビデオ通話は創業者で社長のマレンウェッグが、月例の「全社ミーティング」で話す場にもなっている。

そんなワードプレス・ドットコムでも、1年に1回だけ「合宿」がある。そこでは全社員が集まる。綿密なスケジュール、といったものはなく、アイデアを出し合いながら、いっしょに仕事をするそうだ。


***

リモート環境で働くために大事なことを著者がまとめている。

・自分自身をマネジメントすること。自分の習慣をコントロールして生産的になる必要がある。
・気が散るものを遠ざけて、規律正しくプロジェクトに取り組む。
・場合によっては、従来型の仕事で得られる社交を別の種類の友情と取り替える必要もある。

とのこと。

最後に、ぼくがユニークだと感じたのは社長であるマレンウェッグの姿勢だった。

マレンウェッグはリアルで会うと、温厚な人物だという。真剣に社員の話を聞き、携帯もいじらない。ふだんは社内のブログやチャットに目を通し、業界のイベントに参加し、読書家でもある。凄い仕事量だ。

他方、オンラインでの彼は冷たく厳しい印象を与えるという。社員には簡潔なコメントだけを寄せる。

この温厚さと厳しさのふたつは、社長がもつ特徴にふさわしい。またリモート環境だからこそ、リアルとの切り替えも必要なのだろう、と興味深く感じた。

***

いま、ぼくのようなフリーランスは、複数の会社やチームとオンラインのツールでつながるのが当たり前だ。こうした本は励みになる。