2020年5月11日月曜日

21世紀の日本のこれからを予想する──「サステナビリティ」×「人間関係」の視点から


21世紀の世界、とくに日本の未来を長い目で予想したい。
ここでは「サステナビリティ」(持続可能性)と「人間関係」をかけ合わせた視点から見取り図を描いてみた。 

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人間関係の構築は「コミュニティ」よりも「イベント機会」がメインになる
 長く続くことを前提とした「コミュニティ」への帰属よりも、単発から数回までで参加するようなイベントで人間関係を構築していけるかという機動力が大切になる。といっても漠然とした「異業種交流会」の類ではなく、テーマや個性、参加者の共通性のあるイベントが求められる。
 
ひとのふるまいは「公人」のようになる。(パブリックパーソン、と仮に呼ぶ)
 職場や家庭の「外の世界」も、どこでどうつながるかわからない。だから、常にパブリックなふるまいを求められる。「じぶんの言動は筒抜けである」という、フランスの上流社交界や日本の地方都市におけるような意識が、もっと広い世界で必要とされる。
 
じぶんが何者なのか、なにを求めて仕事をしているのか、ふだんからわかりやすく示すことが大切になる
 仕事は、会社のなかで完結するものではなくなり、所属も移ることが増える。イベントでの自己紹介やインターネット上の発信で、「このひとはなにをしているひとか」がわかるとよい。
 
アイデンティティは「生涯を通じてしたいことと、いまのステージ」を示すこと
所属先は転職やフリーランス化、起業などによって変わりやすい。そのため「生涯を通してこんなことを実現したいと思っており、いまはこのステージにいる(からこの地位や肩書です)」という自己紹介ができるとよいと思う。その生涯の目標が「パブリックな」(社会的な意義が示せる)ものだとなおよさそうだ。
 
一回の接触でじぶんの目的を伝えて、次の提案を示す
 「わたしはこれをしているひとで、これこれをいつも探しており、あなたとはこういう提携をしたい」「こういった協力をお願いしたい」などとすぐに提案できることが次へつながる。
 
生活空間において、パブリックとプライベートの境目がなくなる 
 昭和モデルでは、男性は「どこどこの会社で働く」「家庭は休むところ」といった境目があった。いまだに、家庭を憩いの場にしたいという傾向はありそうだ。だが、「外の社会」(パブリック)と「内の家庭」(プライベート)という境目はどんどん曖昧になっていく。(たとえば、子育てや介護も、社会保障や制度の枠組みによって半ば公的な営みになっている。制度が十分か、という点はさておき)。残るのは、パブリックな意義の大きい活動と、趣味的な楽しみの活動との境目だろう。
 
人間関係において、仕事とプライベートの境目もなくなる
 趣味を通じて知り合った友人に仕事を外注する、逆に、あるプロジェクトでいっしょに働いたひとと個人的に交流する、といったことが当たり前に起こる。それゆえ「このひとは仕事関係」「このひとは純粋な友人」と分けることはできなくなる。
 
365日、仕事にかかわる活動をするようになる
 20世紀は仕事と私生活を分けたし、「ワークライフバランス」が言われたが、仕事は多様化する。たとえば、趣味を小さな仕事に格上げしたり、学生でなくてもボランティアやインターンから給与をもらう仕事をはじめたりと。パラレルキャリアも当たり前になる。「今日はオン」「オフ」と分けられない。毎日、何らかの仕方で仕事にかかわる。
 
私的領域・家庭が営んできた活動は、公的・商業的領域へ移されていく
 20世紀からこのトレンドはあるが、いっそう食事、育児、介護、教育など、これまで主として「家庭」が担ってきた仕事が、公的・商業的領域へ移されていく。日本について言えば、大きな政府が要求されるだろうし、それに加えて民間のサービスが活用される。こうした「外注」と分業化が進み、家庭生活はサービスの使い分けで成り立つ。

多くの「インフラ」を担う労働者として、外国人が流入する
 公的・商業的なサービスが日常を支えるため、「インフラ」の意味するところが相対的に広がる。それらの「インフラ」拡充と、いまいる日本人がラクをするために、立場の弱い若者や、教育とキャリアの不足する労働者、なにより外国人労働者に多くの仕事がまかせられていく。

グローバル化は進む。日本のなかでもひとの多様性は増す
 「保護主義」「自国ファースト」「グローバル化の弊害」そして「コロナの移動制限」など、グローバル化への反動は指摘されるが、21世紀もグローバル化は進む。ひとの移動は網の目のように細かく、長距離になる。「EU」はやはり画期的な挑戦であったし、トランプは黒歴史になるし、コロナで航空会社の株を売り払ったウォーレン・バフェットは長期的な判断を誤ったと思う。政府も企業もESG投資の観点、サステナビリティの観点をとるべきだ。自室の右隣にはルワンダのITエンジニアが住み、左隣には東南アジアの出稼ぎ労働者が住む、といったことはめずらしくなくなる。意識の高い、変革の速い地方ほどそうである。そのため、多国籍の多様性のなかでコミュニケーションをとり、人間関係を築くことはふつうになる。
 
上級市民、二級市民
 日本人は社会的な保護の強い「上級市民」扱いになり、中期・短期の滞在労働者(≒移民)は保障の弱い「二級市民」扱いされる状態は、予想される。他方、多国籍の文化流入がかなり起こり、移民やその周り(非移民を含む)のライフスタイルと文化が活気づく。いわゆるサブカルチャーと食あたりで、一番早い文化混交が起こるか。
 
民族マイノリティの問題は依然、複雑
 いまは「社会的マイノリティ」といった言葉も聞かれるが、もともと民族的な少数者こそが「マイノリティ」と呼ばれて来た。21世紀にもなお、民族マイノリティにかかわる問題は課題が多いままかもしれない。仮に、社会の空気としては「多様性を受け入れよう」が大きな声になりえても、国や制度のレベル(国籍、永住権、出入国管理や不法滞在、コロナ等緊急時の対応など)では「多様性はすばらしい」とはなりづらいかもしれない。

人間関係の提供が巨大なマーケットを生む
 多くのひとが、所属や職場が変わりやすく、また日々、多様なイベント機会を得たいと思うにつれ、そういった機会を提供するシステムを総合的に運営するプラットフォームビジネスが活況を呈する。いまの「広告代理店でいう電通・博報堂」、また「通販におけるAmazon・楽天」のように、「ひとめぐりあうならば、ここのサービス!」という巨大プラットフォーマーが生まれうる。ビッグビジネスになるだろう。
 
人材派遣、人材紹介サービスは没落する
 上の話と一見、食い違うようだが、今流の「人材派遣・人材紹介」はビジネスとして没落する。それは、要は中間搾取のビジネスモデルであり、派遣先・派遣元の双方が労務管理に無責任な体質をもっている。IT業界では4次請け、5次請けもよく起こっているが、こんなことは本来、すべきでない。こういうサステナビリティがないビジネスは生き残れない。いずれ風向きが変わる。すると、政府主導で法規制がはじまり、改革(撲滅)の動きが起こる。それで人材派遣系は一気に縮小する。
 
幸福とはなにか、の考え方が変わる
 20世紀の幸福は物質の豊かさだった。そして、それを味わうのは「プライベートな時間と空間」であった。夫婦の海外旅行であれ、立地のよいところにマイホームであれ、子供の教育に力を入れるのであれ、そういうことだ。だが、これは変わる。もっとも、残念ながら「心の豊かさ」「精神の豊かさ」には向かわない。幸福は「人間関係の豊かさ」に向かう。そして、それを味わうのはプライベートではなく、パブリックな時空間のなかになる。なにか社会に参加し、開かれた活動に参与し、役に立つ(気がする)こと。その活動のなかで友情や愛情や連帯意識を育むこと。これが真の豊かさであるとみなされるようになる。そのよい点として、外国人や社会的な少数者を含め、多様性のある交友関係を築くことが「かっこいい」(クール)、もっと言えばステータスになるような方向に向かう。SNSでは、多国籍の写真を上げる方が、格好がよくなる等。他方で、Facebookで交友関係自慢をするような「見かけ」を重視する、内実のないトレンドも増える。

明るく力強い未来を描ける「ヴィジョナリー」(ヴィジョンを描くひと)が貴重なひとです
そうです。頭がいい悪いよりも、強さと純粋さをもつひと。
  
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以上を大きくまとめると、人間関係の流動性、複雑性、多様なあり方に対応できるライフスタイルと企業の経営が、「サステナブル」(持続可能)である、と言える。

だが、他方で、それに逆行する言い方になるが、21世紀の一番大きな課題は「いかにして核の部分の人間関係を固定化し、それらのメンバーで決まったシステムを長期間、維持するか」ということになる、と思う。これは官僚組織やなんらかの企業(うまく分類できないが)、そして家庭で問われる。

人材の技量や経験を蓄積することがものを言う場面はある。というより、それはいつも大きな力を生むと思う。社会の方向としては「流動性が当たり前」となるからこそ、努力して「長期の安定した人間関係」を築ければ、それが底力になりうる。(主に組織を念頭に置いているが、家庭を維持するのも同じ)。

マクロなトレンドの「流動性」に順応しながら、依然として大切な「安定性」を築く方途を探る。

このふたつの、一見相反することを両方とも意識し、実現できるか。それが21世紀の「サステナビリティ」×「人間関係」の中心課題になると考える。

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言うまでもないですが、この記事はものごとの良い面に、より注目しています。
また、この記事のみ、コメント機能を有効にしています。みなさまのお知恵を拝借できたら、うれしいです。

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