2020年10月5日月曜日

蜘蛛の糸でつながる生命


物理的にも心理的にも離れているひとが、どこかで通じ合うこともある。たとえば、祖父母が生きていた頃、そういう風に感じなかっただろうか。

なんと表現してもよいのだが、ここでは「生命」が響き合う、または「生命」がつながっていると言おう。

半年の間、思い浮かべなかった顔が、ふっと浮かんだりしないだろうか。あの友人はどうしているのか、そしてまた意識から遠のく。

もともと、どんな人間関係もそういうつながりで成り立っているのかと思う。そして、人間関係がなければ「私」もない。

***

アフリカには「ウブンツ」という概念がある。ウブンツとは「人間は他者がいるから、自分も人間である」といった意味だと、マンデラが語っていた。

アメリカ先住民には「ミタクエオヤシン」という言葉がある。「わたしにつながるすべてのもの」といった意味で、もとは親戚のような血のつながりを指し、それが全生命に及ぶ、といったニュアンスのようだ。

僕らは一方では、じぶんの存在を引き受ける独立した人格でありながら、他方では、生命の見えないネットワークでつながっている。それが人間なのかな、と考える。