2020年の夏と秋に詠んだ詩、和歌、俳句をまとめる。
<夢の情景>
私は湖の底に立った。
一つの鉱物があった。ガラスのようにありふれており、水晶のように砕ければ砕けそうに見えた。
湧水があった。水の流れはなかった。
凍える者よ おまえにも 幸あれと 幸あれかしと 願うわれはも
どぶ板を洗う手際や箱根町
湯の本のペンキ屋背筋伸ばしたる
朝起きていっぺんに咲く彼岸花
たそかれの靄の明かりに柿実る
白鷺の首の長さや秋の風
みかづきの雲間に昇る舟なれば 誰かのための灯しなるらむ
上弦の月や青さの染みる頃
夕星(ゆふづつ)に静かに暮れてゆくものか 秋の祈りを古家に寄せて
ウクレレをつま弾く夜や秋深み 常と変わらぬ宵の明星
鎮もれる夜にカノンを捧げけり 御空に美しき宵の明星