2021年2月26日金曜日

【詩歌】晩秋〜冬〜初春の和歌と俳句

昨年の晩秋から、この初春までの和歌と俳句を集めました。



晩秋

宵闇にせせらぎ聞こゆ冬隣

鳥渡る夷狄(いてき)の笛を鳴らしけり

一晩で黄色になりぬ銀杏の木

銀杏散る一身に光を纏い


冬菊のかたわらに立つこの心 雲居の果てにゆかんとすらむ

冬晴れやかたかたと鳴る絵馬の風

どんぐりが社の屋根を叩く音

なにもかもゆっくり動く冬の陽差し

冬柿の木の葉はなしに七つ八つ

ゆくそらや枯れ枝の間に星が見ゆ


虚無僧の廃寺をゆけば枯れ落ち葉 踏む音木の実落ち来たる音

紅葉を照らし給ひぬ観音堂


草の上小ぶりに飛びぬ冬の蝶

男一人立ちションして煙草を吸いぬ 缶コーヒー捨てにけり


半月を幾たびとなく眺むれば 真澄みに渡る心地こそすれ

半月のいよよ輝く冬の道


朝の陽は宮居の奥に差し込みぬ 冬至の大気澄み渡りけり

天井に星降りしきる冬至かな


風来坊ゆく宛もなく時雨けり

父祖の地に帰りたくとも帰れじや 寒さ骨身に染み入る夜に


風花や号外配る男にも

枯れ草の端々に陽の光かな

吟遊の心は止まず冬銀河


新春

初日差す 庭の木を照らして 清らかな喜び告げる風の声

正月にバス待つ人の嬉しさよ

元旦の空を彩る蹴鞠(けまり)かな


神社の境内に地蔵と小さな仏の像ふたつ。

御仏も時には参る初詣


10年ほど前に祖母を思って詠んだ歌。

冬空に天女しあれば白雲の薄絹(うすぎぬ)織りて機(はた)鳴らすらむ



初春(はつはる)のひかりの薄き空にある太陽と月ほのかに白し

早春の草を編み込むシャッポかな

囀り(さえずり)の雲退ける小唄かな

さえずりや一本の木に集まるの

天神に子供集えり枝垂れ梅


人の世を思って。

朝ぼらけひとよに咲けり梅の花


白梅の星を撒きけり宵の闇

白梅のふうわり枝に留まりぬ

白梅を散らす夕べの光かな