2017.7.27.
木曜日更新のエッセイ。
今回は、メールを寝かせる * ハクスリー『すばらしい新世界』 * 旭川で買った靴。
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学者さんから「原稿は一週間寝かせるといいよ」というアドバイス。すぐに送付しちゃダメ。「ついでにメールも寝かせるといいよ。村上春樹は一晩寝かせるとか」。
後半はほんとかどうか知らないが、読み返さないで送ったメールというのはわかってしまう。3回くらい読み返すとよいと思う。
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オルダス・ハクスリーの有名なディストピア小説『すばらしい新世界』を読んだ。子供は人工的に作られ、家族の概念はなく、若者は老いずにフリーセックスし、ソーマというドラッグで副作用もなくハッピーになれる階級社会。
こう書くと「極端な設定だな」と思われるが、小説をすいすい読んでいくと僕には「ここ十年くらいの東京」のデフォルメにも見えてくる。東京を戯画化して寓話にしたら、こんな風になるのじゃないか、とそこここで思う。
ハクスリー自身、ユートピアを希求する気持ちが強かったらしい。単に現実を敵視して皮肉を言いたいわけでもないのが伝わる。
だからこその東京。ソーマの代わりにスマホがある。
それでも、「個人の想いは社会の重荷」(小説内の格言より)。
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6年前に旅先の旭川で、大雨に降られて靴が壊れ、地元の靴屋さんで買い求めた靴がある。雨に懲りたからか、安くはなかったが、ゴアテックスのウォーキングシューズを選んだ。さすがにソールが減ったものの、いまでも現役で使える。良いものは長持ちするね、と雨の日は重宝している。
【書誌情報】
『すばらしい新世界』、オルダス・ハクスリー、黒原敏行訳、2013