2014.10月
10月の1日には、東京へ渡った。祖母に最後に会うためであった。
花落ちて生きると書くの落花生
東京は一番、穏やかな季節を迎えており、静かな風のそよぐなかを散歩することもできた。
草刈のかみにあるらし秋の川
川上からちらほらと流れてくる草。フェンスの向こうには保育園があり、体育の日か、運動会を開いている。
万国旗こすもす咲ける保育園
外でコーヒーを一杯、と思うと、おじゃま虫も飛んでくる。
珈琲のそばに止まりぬ秋の蠅
きみも飲みたいのかい?と訊きたくなるが、分けてはあげない。どうも、寒い日もあるとひゃっくりが出やすくなるようだ。
ひゃっくりの止まらぬ夜も虫の声
アンサンブルを奏でてしまう。リズム楽器担当になる。
札幌へ季節はずれの渡り鳥
渡り鳥は、この時期に北国から本州へ来るものだが、僕の場合は逆。帰札した。
薄紅葉色の上着でランニング
ふたもとの七竈の遅速も愛しけり
ともに円山公園にて。こちらは紅葉がひと月早い。タイムスリップした気分になる。ランニングはちょっと高めのウインドブレーカーだろう。ふたもとの句は、ふたもとの梅の遅速を愛した蕪村が本歌取り。
島さんも満足気なり紅葉狩り
北海道神宮には、島義勇(しまよしたけ)の銅像が建つ。蝦夷地の開拓史判官であった人物。また、広々した公園へ足を運べば、
カフェラテをベンチに乗せる照葉かな
パーカーとストール並ぶ紅葉見る
素敵な二人連れがあちらこちらに。仲の良い友達や親子のようだ。
撒き上げる子供の手から銀杏散る
色変えぬ松にならいて杉静か
大人も子供も黄色い銀杏の葉を楽しんでいる。松と杉は常緑樹であるから、見るひともたえてなかりせば、といった風情で静かなものだ。
白樺の幹ひとり立つ冬隣
いつでも気になるのは白樺である。もうすでに大方の葉は散ってしまっていた。
初雪や雑木林の色づけば
もう冬の季語になってしまうが、巨大なアカナラの並木が黄色く色づく頃には、空気もきりりとしまる寒さで、初雪を迎える。
ジャズの音もものがなしきは暮れの秋
晩秋のものがなしさは音楽にも聞こえる。さて、北大(北海道大学)の有名な銀杏並木を観に行った。はらはらと散っているかと思ったが、色づいて間もないようで、なかなか散らない。
銀杏散る千をこらえて五六枚