オノ・ヨーコの詩集、『グレープフルーツ・ジュース』。最初の版は日本語で1964年、次に英語で1970年。この講談社文庫は、写真を入れて英語版から訳したもの。
「地下水の流れる音を聴きなさい。」
から始まる。
「地球が回る音を聴きなさい。」
「世界中のすべての時計を二秒ずつ早めなさい。
誰にも気づかれないように。」
「一本の線をひきなさい。
その線を消しゴムで消しなさい。」
「絵を切り刻み
風にくれてやりなさい。」
「盗みなさい。
水に映った月を、バケツで。
盗みつづけなさい。
水の上に月が見えなくなるまで。」
「録音しなさい。
石が年をとっていく音を。」
最後の一節は、
「この本を燃やしなさい。
読みおえたら。」
この本にジョン・レノンが寄せた賛辞はこうである。
「ぼくがこれまでに燃やした本の中で
これが一番偉大な本だ。」(1970年)
ちなみに文庫の最後には、英語版が全文収録されている。このやり方はすばらしい。英語ならではのぐっと短い文、エッセンスを味わえる。
"Listen to a heart beat."
"Breathe."
"Draw a line. Erase the line."
"Cut a painting up and let them be lost in the wind."
"Drill a hole in the sky. ......"
"Promise"
などなど…。
素敵な詩集だと思う、ほんとうに。
【書誌情報】
『グレープフルーツ・ジュース』、オノ・ヨーコ、南風椎訳、講談社文庫、1998