2021年3月13日土曜日

ポイボス・ポイエーシス - 明るい創造 その2

 第二歌

第一歌はこちら

地獄の歌を街なかで騒がねばならない。
そう、彼らは言っている。

ちょうどよいことが彼らのモットーになった。
"ほどよくはたらき、
ほどよく遊び、
ほどよく息抜きを
する文明は善きもの哉!"

文明はフランスから始まり、
それに抵抗するのはドイツ人だった。

フランス革命の後に
ベートーヴェンの交響曲が
パリの栄光と繁栄の陰に
リルケとベンヤミンがいた

いずれもロマン派と戦時の闇に飲まれたが。
暴君は統帥ではなく、孤立の群衆だ。

ブルジョワが生まれた。
ひとりの赤子のように。
ブルジョワは天使だった。
紛れもなく天使だった。神と人間をつなぎ、
誰からも理念的な憧れの的となった。

「ドゥイノの悲歌」を歌うことで
天使たちを滅ぼさなければならない。
「美は恐るべきもの」だと
リルケは言うが、美はわれわれのものだ。

天使たちと手を結ぶ
彼らのはためく翼を詩の弓で射る
おおいなる羽ばたきは突風を巻き起こすが
歌の嵐は天使の群れにあらがう

そう、美は友愛となる
深い抵抗のうちで

おお、海辺の太陽が昇る そのためには
知れ、深い地獄へ潜り そこを彷徨うのだと
冥府の底に降りていく
ケルベロスも恐れるに足りない

なぜなら、生還するイザナギが
生まれ変わるオルフェウスが
かぎりないソネットが
ダンテからペトラルカ、
シェイクスピアからリルケまで
名を連ねているから


冥府の子宮を知る者は
そこから這い上がり、再び薄明に立つ

思い出の曙は
アウロラの指先に灯る光を
かざして水平線に昇りゆく
明るい太陽となって

真実を照らす
その時
お前自身が、君が、あなたが、僕が
私がポイボス・ポイエーシスをおこなう


紙ひこうきを折ることも
できる
折り紙は織り目成す布となり
海の編み目を紡ぐだろう



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