2021年3月15日月曜日

ポイボス・ポイエーシス - 明るい創造 その3

第三歌

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打ち砕かれた人々へ
鬱々となって夜のパリをふらつく
路(みち)の上で腰をおろして
天を仰ぐ

病めるからだと
こころを引きずって
路上のコーヒーを飲みながら
何千年が経ったのか

一夜にして

 ベルリンの天使が
荘厳な図書館にいるならば
彼らのために囁やけよ
モノクロの珈琲を一杯

映画のワンシーンのように
30ドラクマで
20クローネで
東独のマルクで
宝永元年に

君はまた

ある時は雲になって漂い
漂泊の果てに
疲れた星を受け止める

雲は大きく悠々と
空を行き
くたびれた月が落ちて来る

雲のしとねに休まれば
月もひかりを増し
少し太るために
南中の運動を始める

おとぎ話にも似て
神話的な現実が、物語に描かれる。
マーク・トゥエインは「ファンタジーが大切だ」と
言った。

そう、ファンタジーとは現実の別名だ
ファンタジーこそが現実だ
なぜなら

ファンタジーは天上の神話と
地上の掟のあいだにあるから
そしてまた現実は
イデアの世界と物質の大地のあいだにあるから

わたしたち人間が生きるのは、
その「あいだ」だから
音楽が流れる
古の交響曲が、世界を満たす

シェイクスピアのグローブ座が1605年に
「世界劇場」テアトル・ムンディを開いた

円形劇場のコロスが
民衆の歌を
歌い出し
オイディプス王も笑い出す



宴のあとに太陽が降りていく


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