2014年5月1日木曜日

【エッセイ】雨と木曜日(5)


 エゾヤマザクラが咲いた。4月の26日、27日頃に咲き始め、いまは満開の趣。去年はゴールデンウィークのあいだに開花しなかったから、休暇もものさびしいような心地がした。今年はひといきに暖かくなり、穏やかな日曜日、円山公園はお花見のため一年でもっとも人出が多くなる。ぽかぽかと日を浴びながらピクニックシートを敷いて、ビール、バーベキュー。赤ん坊を連れて、はたまた犬もいっしょに。

***

 有機珈琲がこの頃、楽しい。一年前に開店した専門店で、思い切って少し値の張る有機珈琲豆を買ってみた。最初はなんの飲み物だろうと思うくらいに驚いた。まろやかで、ぴりぴりした刺激がまったくない。無農薬と、防腐剤を使わないためらしい。JASの厳しい認定をクリアした豆だけが全世界から集まる。一週間も飲んだら、すっかり慣れて心地よい。だが、ふつうの珈琲の雑味もふと恋しくなる。それぞれに美味しい。

***

 バルサの食卓。なんとも美味しそうな写真が並ぶ。バルサは、上橋菜穂子さん(国際アンデルセン賞を先日、受賞された。)のファンタジー小説の主人公だ。そこに出てくる架空の食べ物を実際に作ってみよう、という企画からこの本が生まれた。レシピの考案から調理、飾りつけまで妥協がない。無発酵のパン、旅に欠かせない干し肉を使った料理、お菓子。想像の世界へ入り込むというより、そこから出てくる料理の不思議。


【書誌情報】上橋菜穂子・チーム北海道、バルサの食卓、新潮文庫、2009